歌は最高のプレゼント
今日は6年生の担当クラスで、最後の音楽の授業の日。
そこで、私は一大決心をする。
「授業の終わりにアカペラで歌のプレゼントをしよう!」
だけど、これはいくら歌の好きな私でも勇気がいる。緊張して声が震えたり、かすれたり、音程が狂ったりするとめちゃくちゃ恥ずかしい。
今までに楽器演奏や弾き語りならやったことあるけど、アカペラはまだ一度しか実現したことがない。用意はしていくんだけど、そのときになると、「こんな下手くそな歌、子どもは引くか?」とか、「時間もないことだし、やめとこ。」とか、例によってビビリちゃんが出てきて、結局やらずじまいになったりする。
そんなときは、バレンタインデー前日に、一日かけて用意したチョコレートを、渡せなかったときのような気分になる。
でも、今回はやる!と決めた。下手でもなんでも、世界にひとつしかない、自分の生の声で贈るプレゼントなんて、最高じゃないか?!って思った。そして、パッと浮かんだのが、♪歌うたいのバラッド♪という歌。
もう今の心境はこれしかない。
さて、授業では、今まで演奏してきた曲をメドレーで演奏したり歌ったりしながら、1年を振り返る。音楽は不思議だ。曲が流れるといっしょに、その頃の様子や考えていたことなんかが、いっしょに蘇ってくる。あれもこれもと歌っているうち、時間が迫ってくる。このまま終わってもいいな・・・またまたビビリちゃんがつぶやき始める。
「いや!決心したじゃないか!いけ!いけ!GO!!!」サンチー(私の気合係)が現れて気合を入れてくる。そこで、取り合えず子どもたちを座らせて、ちょっとだけ話を始める。
「先生は、実は子どもの頃、心が氷のようにカチカチに固まっていて、人前で話をするとか、ましてや歌を歌うなんて、そんな表現はまったくできない子だったんだよ。だから親しい友だちもなかなかできなかった。」
そこまで話すと、子どもたちは「え~?!うそ~!!」とびっくりして声をあげる。「昔の同級生に、先生をやっていると言うと、ちゃんと聞こえる声で話せているか?と心配されるんだ・・・」
どうも信じられないという顔をしている。そうなんです!音楽室はプールの近くの4階にあるのだけど、夏のある日、このクラスの子に言われたことがある。
「先生の声やばいよ!プールまで聞こえてくる。」と・・・
なので信じられないのも無理はない。そこで続きを話す。
「だけど、音楽が先生の氷のような心を融かして解放してくれました!だから、音楽の先生になりました!音楽の中でも、特に歌うことが好き!歌は何にもなくてもどこでも歌えて、いつでも心を自由にしてくれるから。では、最後にこの歌をみんなにプレゼントします。」と話したら、続いてためらいなく歌い始めていた。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ~~~~~
あ~歌うことは 難しいことじゃない
ただ声に 身を任せ 頭の中を空っぽにするだけ
あ~目を閉じれば 胸の中に映る
懐かしい思い出や あなたとの毎日
本当のことは 歌の中にある
いつもなら 照れくさくて言えないことも
今日だってあなたを 思いながら
歌うたいは 歌うよ
ずっと言えなかった 言葉がある
短いから 聞いておくれ
(一年間 私の音楽の授業を受けに来てくれて)
ああ ありがとう~~~
し~んとしている彼らに、「みんな聞き惚れたか?終わったよ。」と思って、
すかさず言った。
「ここ、拍手するとこ!」
すると、素直にパチパチと手を叩いてくれる中、1人の子が前に出てきた。
「お?こんどは君が歌ってくれるのかい?」みたいになったら、その子は、すっとメッセージカードを渡してくれた。
「わあ~、ありがとう~!」と喜んでいると、今度はすかさず、
「そこ、泣くとこ!」と言われた。
いや、まだ卒業式まで何日もあるし、その間歌の練習で、「まだまだ本気が足りない~!!」って怒るかもしれないし、ここはグッとこらえて、涙はとっておくよ。と伝えた。
最後の挨拶をして、彼らを見送り、メッセージカードを開くと、そこには、感謝の言葉と共に、「とても楽しい授業だった。」「先生はとっても明るくて面白かった。」「音楽がとても好きになった」「音楽のすばらしさを知った」・・・など、うれしい感想がちりばめられていた。
今日の壇珠(ミユ)さんの記事に、4日間をともにした、坂爪さんたちと別れた後の心境が書かれている。
わたしはどんなに寂しくても、もう心にぽっかり穴が開かないのだと知った。人が埋めてくれる穴がなくなっていて、不変の自分と共にただ満たされていた。
わたしは気がついた。わたしは2人によって幸せが拡大されたわけではなく、出会う前と、一緒にいるときと、帰ってしまったあととの間で、そこにはなんの差もないのだ。
唯一の違いは、彼らを愛しているということだけだ。わたしの幸福感の強弱や上下に因るものではなくて、ただ元気であって欲しい、ただ山あり谷ありをやりきって楽しんでほしい、どんなに抱きしめて伝えても足りないほどに幸せであってほしいという気持ちでいっぱいだ。
先生になりたての頃は、卒業シーズンになると、卒業生を送り出すのが、寂しくて寂しくてたまらなかった。ずっといっしょに過ごしてきた子どもたちが、もう4月からは学校にいなくなると思うと、心にぽっかりと穴があいたようだった。
かと思えば、とにかく卒業式まであと〇〇日!と思いながら、なんとか自分を奮い立たせてがんばらなきゃならないくらい、辛いときもあった。
でも、今年の今の心境はそのどちらとも違う。
なんだかとてもいい風が吹いている。壇珠(ミユ)さんの記事を読んで、今こんなに満たされていること、人の幸せを心から願えること、そんな素直な気持ちになれていることに感謝でいっぱいです!
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